村松新学長インタビュー ~新入生・在校生に向けて~

新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます!
今回の記事では、新たに学長として就任される村松 正和 学長へインタビューしました。
在校生の方にも興味深い内容だと思いますので、ぜひご覧ください!

村松 正和 学長

1965年生まれ、東京都出身。
1994年3月、総合研究大学院大学数物科学研究科統計科学専攻博士後期課程を修了。
1994年4月、上智大学機械工学科助手に着任。
専門は最適化理論やオペレーションズ・リサーチ、ゲーム情報学など。

本学には、2000年に当時の電気通信大学電気通信学部情報工学科講師として着任。
その後、2001年に助教授、2008年に教授に昇進後、2020年に副学長や総合コミュニケーション科学推進室長、大学教育センター長、教育戦略担当理事を歴任。
2026年4月から学長を務める。

研究者としての村松学長

― 村松理事の研究内容についてお聞かせください。

 最適化理論やオペレーションズ・リサーチ、あるいはゲーム情報学といったものになります。最適化というのは、いろんな条件の下で関数を最大化・最小化しようというもので、様々な問題をそういう数理モデルに定式化できるんですが、それをどうやって解くか、あるいはその問題の持つ数学的な性質を観察するというような感じです。

 オペレーションズ・リサーチというのは、最適化だけではなく、スケジューリングだったり、工場計画・生産計画だったり、いろんな物事をうまくやりましょうという学問です。ゲーム情報学については、囲碁に興味を持っていたのでコンピュータ囲碁をやっていました。ゲームに勝つということは、最適な手を選ぶということと関係があり、つまり最適化と相性が良いのです。アルファ碁が出てきたので、もうこれ以上強くしてもしょうがないなと思って自分自身はやめてしまいましたが、そこに至るまでの8年ぐらいはずっとやっていましたね。

― 教育戦略担当という肩書についてお聞きしたいのですが、どういったことをやっているのでしょうか?

 基本的に理事というのは戦略を考えて、それを副学長や教務課と共に実行に移していくという形になります。これまでやってきたのは、副学長として4年間、その後理事として2年間で、例えばターム制を導入したり、副専攻を導入したりと、教育をこういう風に変えていこうという戦略を練る役割です。現在は生成AIの進展が目覚ましく、教育も大きな影響を受けています。どのようにAIを本学の教育の中に取り込むのか、今はそこを考えることが重要だと思っています。

 また、2026年度後学期よりゲーム開発人材を育成する副専攻を設置することを計画しています。ゲームを中心とするエンタテインメント領域は、ご存知のようにたいへん大きな産業で、日本からの輸出額として車に次ぐ規模をもっていますが、現在、そのゲーム開発人材が業界でたいへん不足しています。特に、最新の科学技術を知りながらゲーム開発の経験がある、言い換えれば、自ら最先端技術を開発しゲームに活用できる、そういう人材が不足しているのです。本学の学生は、そもそも各自がそれぞれの専門領域を深く学んでいるので、そこに横串に「ゲーム開発」というキーワードで副専攻プログラムを用意し、その業界で活躍できる人材を育みたいと考えています。そのため、今年に入ってからエンタテインメント創造研究教育センターを立ち上げて準備をしているところです。

新学長として掲げる「軸」

― 新学長になってからやりたいこと、軸にしたいことをお聞かせください。

 本学は非常にコンパクトなキャンパスの中に、多様な分野の研究をしている人たちがたくさんいます。そういう人たちをうまくつなげて、研究を活性化していきたい、教育も活性化していきたいと思っています。

 特に目を向けているのは社会実装という分野です。例えば円筒形太陽電池。この間、大島まで行って見てきましたが、シリコンだと全く影になってしまい下は使えないのに対して、あの形であれば光がまばらに落ちてくるので、太陽電池の下で明日葉を育てることができる。発電と農業を並行して実現できるのです。実際ものすごくたくさんの明日葉が育っていて、大島の方が「こんなにたくさん生えているところはあまりない」とおっしゃっていました。もちろん基礎的な研究も大切ですが、そういう研究を社会に還元していく試みも、これからやっていかなければいけないと思っています。

Nexus Park (e-Nexus棟1F) に展示されている円筒形太陽電池のモデル
(写真:坂口 剛志)

田野前学長との連続性と変化

― 4月から学長になられるにあたって、田野前学長が掲げてきた「共創進化」はこれからも引き継がれますか?
  また、村松理事ご自身が新たにやりたいことはありますか?

 共創進化というのは本学の大事なところだと思っています。特に僕がいいなと思っているのは、
“UECビジョン 2020 and beyond” の中の「この大学を共創進化スマート大学にする」という部分です。そこをすごく大きく広げたい。本学がどんどん進化していくようにしたい。

 そのためには、もちろんAIを積極的に活用していく必要がありますが、それだけでは十分ではありません。人と人とが直接コミュニケーションし、交わる場を、これまで以上に意識してつくっていくことが重要です。個々が孤立したままでは、新しい発想や進化は生まれません。対話を通じて互いに刺激を受け、異なる考えが交わることで、はじめて新しい価値や進化が生まれてくるのだと思います。

 もう一つ重要なのはダイバーシティです。本学の場合、まずは女性が少ないというところが問題だと認識しています。経営協議会は今まで10人のうち9人が男性でしたが、私は来年度、9名中4名を女性にして、ほぼ半々の比率にしました。常勤の理事にも初めて女性を登用して、上の方から変えていかなければいけないと思っています。女子学生に選ばれる大学になっていきたいですね。

学生との対話について

― 田野前学長の時代には学生学長オープントークというものがありましたが、あれは続けていかれますか?

 名前は変えるかもしれませんが、学生さんに直接語りかける場は設けたいですし、そういう場で学生さんの意見も吸い上げていきたいと思っています。

― 学生懇談会とは別に、一般の学生から広く意見を募るという形でしょうか?

 そうですね。私はこの2年、すべての学生懇談会に出席しましたが、学生懇談会はどちらかというとちゃんとした(堅い)学生がたくさん来るイメージがあります。そういう人の意見も大切だけど、一般の学生の意見も大切なので、両方残していきたいと思っています。

― 先ほどオープントークのお話もありましたが、学生との直接的対話を大切にしていきたいということですね。

 はい、学生さんに語りかける場を設けながら、一般の学生も含めて幅広く意見を吸い上げていきたいと思っています。学友会などで活躍している学生の声も大切ですが、それ以外の学生の声も同様に大切にしていきたいというのが私の考えです。

新しい学びの場:Nexus Park (e-Nexus棟1F)

― 西9号館や東11号館など、新しい建物が増えてきていますが、学生にどう活用してほしいですか?

 最近、空いている教室を皆さんに使ってもらえるようにしました。教室の入り口にQRコードがあって、今使えるかどうかがわかるようになっています。使えるところはどんどん入って活用してほしい。勉強してもいいし、何をしてもいい。常識の範囲内でやってもらえれば。

 西9号館にはYogiboの部屋があって、みんなよく昼寝していますよね。まさにそういう活用をしてほしい。あとピクトラボという工場のような施設があって、3Dプリンターなどが24時間院生なら使えます。

 そうそう、この部屋(Nexus Park: e-Nexus棟1F)の照明も特徴的なんですよ。この照明は株式会社モデュレックス様よりご寄贈いただきました。APIで自由に動かせる照明で、万博の日本館に入っていたものの上位機種なんです。例えばパーティーの時に魚を置いたらすごく美味しく見えるような光にするとか、そういうことも実演してもらってびっくりしました。学生さんにも開放すると思うので、ぜひプログラミングして楽しんでほしいです。

Nexus Park 内に設置されている寄贈プレート
照明が数多く配置された空間は、明るいながらに落ち着いた印象を与えている

大学時代の挫折と学び

― 大学時代のことを少しお聞かせください。サークルには入っていましたか?

 サークルには入っていなかったんですよ。クラスの仲間とはよく遊んでいましたが。実は留年もしているんですよね。大学を5年かけて卒業して、修士に行って、博士に行きたいと言ったんだけど博士の試験に落ちて、別の大学の博士課程に進んだという。大学時代には結構挫折がありましたね。

― 留年はどのタイミングでしたか?

 1年生を2回やったというイメージですね。大学の制度として1年生を2回やる仕組みはなかったんですけど、まあ自主的に1年生を2回やったというぐらいです(笑)。

― 学生時代に楽しかった思い出はありますか?

 クラスはほとんど全員男で女性が3人ほどいたくらいで、学園祭の時に女装喫茶をやってすごく儲けた記憶があります(笑)。あとはみんなでスキーに行ったり、泳ぎに行ったり、いろんなところに旅行して遊んでいましたね。スキーは今も毎年行っていて、去年はスキー検定の2級を取りました。今年は忙しくて行けなかったのが残念です。

女子学生へのメッセージ

― 電通大は女子率が低いと言われていますが、在学中の女子学生に向けて何かメッセージはありますか?

 まずは来てくれてありがとうございます、ということが一つ。
 そして、何より電通大の学生生活を楽しんで欲しいです。女性が電通大で学生生活を楽しむために欠けていることがもしあるとすれば、ぜひ教えて欲しい。できる限り改善したいと考えています。
 最後に、もしもうすでに学生生活を楽しんでいるということであれば、その楽しさを後輩たちに伝えてほしいなと思います。高校の後輩でも、近所の人でもいいから、「電通大楽しかったよ」と伝えてほしいです。

囲碁から学ぶ人生

― 囲碁の研究もされているそうですが、囲碁の魅力はゲーム理論や戦略といったものと通ずるものがあるからでしょうか?

 囲碁って、なんか人生に通ずるような気がしていて、奥が深いんですよね。盤上に石をどんどん置いていくだけなんですが、あるところで「自分の石が相手に捕獲されて、もうダメだ」と思うことがある。でも、取られることを生かして勝利に近づくことがあるんです。これを「捨て石」というんですが、日常用語でも使いますよね。あれは囲碁用語なんですよ。自分が打った石を犠牲にして、もっと大きいものを取る。

 悪い手を打ってしまうことって必ずあるんですよ。一人で百手ぐらい打つので。でも、悪い手であっても置いた以上は盤面に残るんですね。それで、その悪い手をどのように活用するのか考えていく。そうやっていると、いつの間にか形勢が良くなったりする。誰と付き合うかとか、どの大学に入るかとか、そういうのって、ある種一手一手を打っていっているわけなんですよ。その選択が「しまった」と思っても、自分が打った手なので責任がある。自分が選択した結果は結果として、それをどうやって生かすかを考える。そういうことを教えてくれたのが囲碁かなと思っています。

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