東京外国語大学 学長インタビュー ~文理の架け橋~
2025年9月20日(土)に開催された首都圏国立大学合同ハッカソンの最終発表会にて、東京外国語大学の春名学長にお話を伺ってきました!
これからの文系と理系の関わり方、大学の学びと就職のつながりなど、悩めるすべての学生に読んでほしい、未来を拓くためのメッセージがここにあります!

期待を語る春名学長
東京外国語大学
春名 展生 学長
1975年生まれ。
1997年3月、東京大学工学部都市工学科を卒業(学士(工学))。
2000年3月、東京大学大学院総合文化研究科修士課程(国際社会科学専攻)を修了(修士(学術))。
2014年6月には博士号(学術)を取得。
専門は国際政治学、日本政治外交史。
東京外国語大学には、2015年に東京外国語大学大学院国際日本学研究院 講師として着任。
その後、2021年に学部長補佐、2023年に副学長を歴任。
2025年4月に東京外国語大学長に就任した。
ハッカソンに学ぶ、「実践の場」の重要性
―― 今回の首都圏国立大学合同ハッカソンのような、「実践の場」は、今後の大学教育においてどのような意味を持つとお考えですか?
大学というのは、少し社会の現実から離れた理論とか、あるいは基礎的な力を身につける場です。外大でいうならば外国語とか言語を学んで、その訓練を積むために閉じられたキャンパスがあります。でも、結局社会に出るということはキャンパスの外に出るわけだから、そうするとキャンパスの中で身につけた基礎的な力だけでは、そのままでは通用しないのです。
昔までであれば、社会に出てから自分なりに訓練を積んで、自分が身につけた力をどう活かしていくか考えたんだと思うんですけど、今後は、大学にいるうちに、自分が大学の特に1、2年生で身につけた基礎的な力をどうやって社会で応用していくかっていう訓練の場を作るのが、大学教育として大事だと考えています。
今、大学4年間って前提で話をしましたけど、本当はそうじゃなくて、もうちょっと文系の大学生も大学院まで進んで、5年、6年という期間で考えれば、大学で4年間学んだ後に社会でどう活かすかっていう訓練と機会を得て、それを踏まえて社会に出ていく、そういうことがあってもいいと思います。
専門分野に閉じこもる時代の終わり
―― 学生としては、つい文系と理系に線引きをしてしまいがちです。これからの大学教育において、「文理融合」をどう進めていくべきだとお考えですか?
これからの時代は、『私の専門はなになにの歴史です』とかだけじゃ、たぶん社会の中で積極的な役割とか貢献というのができない時代になっています。それは理系にとっても同じだと思っています。大学で与えられる専門というものだけでは、いろいろな社会課題に取り組めないし、解決できない。だからこそ、本学のような文系の大学も理系の大学と協力していくのは自然なことなんですね。必然的に、いろんな分野の人と交わらざるを得ないという訓練を、大学の時に積まなきゃいけないんじゃないかな、というふうに思っています。

「就職のため」ではない、学びと社会をつなぐ大学へ
―― 近年、大学が「就職予備校」のようになっているという指摘もありますが、この現状についてどのようにお考えですか?
最近、大学が就職活動の場になっている、という指摘があります。それは、大学での「学び」と「就職活動」が完全に分断されてしまっているからです。この二つを繋げることができれば、大学生活はもっと意味のある時間になるはずです。
そのために、今ある大学での研究を少し社会に近づける。学生が学んだことを社会で活かす訓練をしつつ、それを少し引いた視点、批判的な視点で見つめる力を養う。後者もなければ、社会を変えていくことはできません。「勉強して、研究して、就職を考える」という活動が全て一本の線で繋がれば、大学生活が就職活動に飲み込まれてしまうことにはならないはずです。
その意味で、電気通信大学の学長が推進されている「インダストリアルPhD(企業と連携した博士課程)」には大変共感しており、こうした仕組みを人文社会系の分野にも広げ、大学教員以外の多様なキャリアを築けるルートを作っていきたいと考えています。
知識を「発信」する力こそが未来を拓く
―― 今回の首都圏国立大学合同ハッカソンの最終発表会では、外大生の皆さんのプレゼンテーション能力の高さに感銘を受けました。その「発信する力」は、どのように育成されているのでしょうか?
本学の学生はプレゼンテーションが上手だと言っていただくことがあります。それは「発信する力」を重視しているからです。例えば、読む・聞くといったインプット中心の学習だけでは、発信力は高まりません。本学が入試でスピーキングを課しているのも、まさにそのためです。
言葉の力だけでなく、自分の考えを相手にどう伝えていくか。この「伝える努力」は、これからの社会で不可欠なスキルです。日本の教育全体が、もっとアウトプット、つまり発信することに力を入れていけば、日本は絶対に変わっていけると信じています。
大学間の連携で生まれる新たな可能性
電通大の学生さんたちにも、ぜひ私たちのキャンパスに来てほしい。専門的な予備知識なしで受けられる授業はたくさんあります。大学間の物理的な距離は近くても、まだ少し心の距離があるかもしれません。互いに行き来し、交流することで、新たな可能性が生まれると確信しています。
おわりに

今回、異分野の学生たちが協働するハッカソンという熱気あふれる場で春名学長にお話を伺えたことは、私たちにとって非常に大きな意味がありました。まさに私たちが現場で体験していた「分野を越える面白さ」や「伝えることの難しさ」を、学長が教育の未来として語ってくださったからです。
専門知識を深めることはもちろん大切。しかし、それと同じくらい、その知識を社会や異なる分野の人々とどう繋げていくかという視点を持たなければならないのだと、強く感じました。「大学生活全てが就職で終わっちゃう、とはならないはず」。学長のこの言葉は、大学がもっと自由で、もっと挑戦できる場所なのだと、私たちに改めて教えてくれました。
この貴重な気づきを与えてくださった春名学長に心から感謝するとともに、この記事を読んで心が少しでも動かされたなら、ぜひ一緒に一歩踏み出してみませんか。全く違う大学の授業を履修してみたり、学外のイベントに参加してみる。その小さな挑戦が、きっとあなたの世界を大きく広げてくれるはずです。
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首都圏国立大学合同ハッカソン by ソフトバンク 取材レポート
1ページ目:イベント概要&電通大生インタビュー
2ページ目:ソフトバンク寺田さんインタビュー
3ページ目:電通大生&農工大生インタビュー
4ページ目:最終発表レポート
東京外国語大学長 インタビュー記事

